半導体を活用して自動化と効率化を促進する 3 つの方法

半導体技術は、ロボットからファクトリ・オートメーション、グリッド、ホーム・オートメーションまで、多様な産業用システムでの生産性向上を推進

10 7月 2022

お客様のお話を伺うと、どのお客様も生産性を最大限に高める効率的なシステムを通じて、より高いレベルの自動化と制御を望んでいます。興味深いのは、部品レベルの小さな革新であっても、システム・レベルでコストやエネルギー、時間の節約につながる可能性があるという点です。

多様なアプリケーションに注目して、TI が実現しようとしているのは、ロボットから、ファクトリ・オートメーション、グリッド、ホーム・オートメーション、およびその他の多くの産業用システムで存在している、3 つの一貫したトレンドを認識し、それに対応していくことです。

センサの数とデータ量の増加

データ量が多くなると、システムが周囲の状況に対応して、動作と応答の迅速化と高精度化を強化することができます。これは、オートメーション (自動化) に関わるシステムにとって重要な能力です。ただしこれは同時に、システム全体でデータの迅速かつ効率的な処理をいっそう重視しなくてはならないということにもなります。

また現在では、以前は検知できなかった多くの物事を識別する能力も活用できます。TI のミリ波レーダー・センシング技術を活用することで、事実上あらゆるシステムにおいて、さまざまな物体とその動きを高精度で検出できます。当初は大規模、複雑、高額だった技術ですが、TI のミリ波レーダー・センサが小型化、使いやすさの改善、より手ごろな価格設定を推進したことで、より高度なセンシング能力にアクセスしやすくなりました。

このように大量のデータがシステムに流入する状況で考えなくてはならないのは、データを効果的に管理し、より迅速かつよりスマートな意思決定を下すにはどのような方法が適切か、という点です。1 つのアプローチは、エッジ AI に対応したハードウェアとソフトウェアを産業用システムに内蔵し、より多くの量のデータを処理して、変化を続ける周囲の環境にリアルタイムで対応することです。

さまざまな情報発生場所からのインプット情報の管理は、課題をもたらす可能性があります。たとえば、TI の各種レーダー・センサを活用して、協働ロボット(コボット)の認識能力を強化することができます。その結果、コボットは人間の周囲で、ほんの数年前には実現不可能だった方法で、より安全かつ効果的な協調動作を実現できます。また、ビジョン・センシングを追加することで、コボットが自らに近接してきている障害物をさらに的確に認識できるようにすることも可能です。このような形で、センサ・フュージョン技術が役割を果たします。センサ・フュージョンをシステムに導入すると、設計者は複数のセンシング・モードをサポートするフレキシビリティを確保できます。たとえば、システム全体の認識能力の強化に役立つ、ビジョン・センシング、レーダー、LIDAR などがこれに当てはまります。

ここまでは一般的な例としてコボットを取り上げましたが、同じコンセプトを他のアプリケーションに適用し、オートメーションの強化と効率の向上を実現する方法を容易に確認することができます。

システムのエネルギー効率をさらに向上

2 番目のトレンドは、システムのエネルギー効率を向上させることです。高性能化を求める需要はますます強くなっていますが、同時にシステムのサイズを従来と同じままにする、あるいは小型化を試みる流れもあります。これら両者のバランスを維持するには、システムの消費電力を低減する必要があります。これは、バッテリ動作システムにも当てはまります。性能要件を満たすとともに、固定的な電力供給能力も維持する必要があります。

エネルギー効率を改善する新しい手法が、あらゆるアプリケーションやサブシステムで登場しています。それらは、より多くのセンサを既存のシステムに内蔵しようとしている各種医療アプリケーションや、より電力効率の優れたバッテリを通じて自動車メーカー各社が航続距離の延長に取り組む電気自動車 (EV) です。

このトレンドは、HVAC (エアコン) システムでも見かけます。ほんの数年前までは、すべての住宅用 HVAC (エアコン) システムはシングル・ステージのコンプレッサを使用していました。現在、可変速度コンプレッサを採用するシステム (インバータ・エアコン) が増加しています。その結果、全体のエネルギー使用状況はさらに効率的になっています。

可変速度コンプレッサは、リアルタイム制御アプリケーション向けの設計を採用した特化型プロセッシング技術に基づきます。比較的最近まで、この技術は高額で、実装も複雑でした。TI の『C2000』や Sitara マイコン (MCU) などの手ごろな価格設定のリアルタイム制御マイコンを使用することで、モーターの制御能力を最大化し、同じシステムでエネルギー効率を高めることができます。住宅で可変速度 HVAC (インバータ・エアコン) システムへの切り替えが進んだ結果、グリッド (電力網) 全体での大量なエネルギー節約が実現されています。

窒化ガリウム (GaN) のようなワイド・バンドギャップ技術と組み合わせるリアルタイム制御に関する革新は、データ・センターの各種電源、ソーラー・インバータ、パーソナル・エレクトロニクス向けの各種高速チャージャ、電力密度の高い他のアプリケーションで、システムの効率と電力密度に関するブレークスルーを実現します。

コネクティビティの増加

身の回りの世界で、個人レベルのコネクテッド (ネットワーク接続) 対応がますます進んでいます。これと同様に、コネクティビティ対応の強化はビジネスの観点でも有益です。

たとえば、会社が自社工場に多くのセンシング機能やコネクティビティ機能を追加している場合、建物のうち使用していない領域で電力使用量を減らすこと、または需要の変化に応じて製造量を調整することが容易になります。このレベルのフレキシビリティ強化に役立つのは、産業用通信や、有線とワイヤレス両方の技術であり、イーサネット、CAN (コントローラ・エリア・ネットワーク)、Bluetooth®、Zigbee® などが該当します。

現在は、このような仕組みの都市への適用が進んでいます。電力会社は、ワイヤレス・メッシュ・ネットワークを使用することで、自社のネットワークの監視や需要に合わせた対応をより的確に実施できます。このような強化型コネクティビティを、住宅用ソーラー・システムのようなエネルギー蓄積システムと組み合わせると、サービス・プロバイダがピーク時間帯にエネルギー使用量を調整しやすくなります。ビルやスマート・シティをサポートする各種システムでコネクティビティを強化し、企業は自社の生産性を、従来は達成不可能だった新しい水準に引き上げることができます。

よりスマート、より効率的、より的確なコネクテッド (ネットワーク接続型) システムを実現できるように TI がお客様を支援するのは、半導体を通じてエレクトロニクス製品をより手ごろな価格設定で提供しようとする TI の熱意を表しています。お客様がシステムの開発と最適化を実施できるように、TI は複数の方法を提供し、センス、プロセス、反応をこれまでのどの例よりも迅速に実行するのに役立つ次の革新を推進します。