車載機器向けに、ドライバ、保護回路や能動的な電力管理機能を集積した業界初のGaN FET製品ポートフォリオを発表
車載用充電回路や産業用電源のアプリケーションで電力密度を倍増、最高の電力変換効率を提供する製品を実現

日本テキサス・インスツルメンツは、車載機器や産業用電力アプリケーション向けに、次世代の650Vと600VのGaN(窒化ガリウム)FET(電界効果トランジスタ)の高電圧電力管理製品ポートフォリオを発表しました。これらの新しいGaN FET製品ファミリは、2.2MHzの高速スイッチング・ゲート・ドライバを集積し、電力密度を倍増、99パーセントの電力変換効率を提供するほか、既存のソリューションと比較して、電力用磁気部品のサイズを59パーセント削減します。TIはこれらの新型FETに専有のGaN材料やGaN-on-Si (ケイ素)基板を使ったプロセス能力を活用し、炭化ケイ素(SiC)など同種の基板材料と比較して、コストやサプライチェーン上の利点を提供します。製品の詳細に関しては、 www.tij.co.jp/LMG3425R030-pr-jpと www.tij.co.jp/LMG3525R030-Q1-pr-jpをご覧ください。

 

クルマの電動化によって自動車業界が変容する一方、より短い充電時間と、走行距離の延長への需要がさらに高まっています。その結果、技術者は自動車の性能を低下させずにコンパクトで軽量な車載システムを設計するという困難に直面しています。TIの新しい車載向けGaN FET製品を使うことで、電気自動車(EV)に搭載される充電回路やDC/DCコンバータのサイズを、既存のSiやSiC半導体のソリューションと比較して、最大50パーセント縮小でき、技術者は使用バッテリーの拡大、システムの信頼性の向上や設計コストの削減などを実現できます。産業用機器の設計では、これらの新型デバイスを使うことで、ハイパースケール(大規模)や企業向けのコンピューティング・プラットフォーム、5G通信向け電源をはじめとした、低損失と基板実装面積の縮小が重視されるAC/DC電力供給アプリケーションにおいて高効率と高い電力密度を可能にします。

 

Strategy Analytics のパワートレイン、ボディ、シャーシ&セーフティ・サービス担当重役のアシフ・アンワー氏(Asif Anwar)は次のように述べています。「GaNのようなワイド・バンドギャップ半導体は、パワー・エレクトロニクス分野でも特に高電圧システム向けに、本質的に、しっかりと確立された機能を提供します。TIは10年以上にわたる投資と開発によって、社内製造のGaN-on-Siデバイスに、最適化されたSiドライバ・テクノロジを集積する独自の包括的な手法を提供することで、GaN半導体を新しいアプリケーションに実装することに成功しました」

 

TIのハイボルテージ・パワー部門バイス・プレジデントのスティーブ・ランブーセス(Steve Lambouses)は次のように述べています。「産業や車載のアプリケーションでは、より大電力の回路を、より小さなスペースに実装することが要求され、設計者は最終機器の長い寿命期間にわたって高い信頼性で動作する検証済みの電力管理システムを供給しなければなりません。TIのGaNテクノロジは、4千万時間以上のデバイス信頼性テストと5GWh(ギガワットアワー)以上の電力変換アプリケーションのテストを裏付けに、あらゆる市場の技術者が求める高信頼性を長い寿命期間にわたって提供します」

 

より少ないデバイス数で電力密度を倍増

高電圧、高密度のアプリケーションの設計では、基板実装面積の縮小も重視されます。電子システムが小型化されるにつれて、構成部品を小型化し実装密度を高くしなければなりません。TIの新型GaN FETは高速スイッチング・ドライバに加え、保護回路や温度センサなどを集積していることから、技術者は基板実装面積を縮小しながら高性能の電力管理システムを設計できます。高集積度と高電力密度を備えたTIのGaN FETテクノロジによって、ディスクリート構成のソリューションに通常必要な10個以上の部品を削減できます。さらに、これらの新型FET製品はオン抵抗が30mΩ であり、ハーフ・ブリッジ回路で使用した場合、最大 4kWの電力変換が可能です。

 

PFC(力率補正)で業界最高の効率を達成

GaNデバイスは高速スイッチングの利点を提供することから、より小型、軽量で高効率の電源システムを設計できます。これまではスイッチング速度の高速化と、それに伴って増加する電力損失とのトレードオフが必要でした。今回発表の新型GaN FET製品ではTI独自の理想ダイオード・モードを使って電力損失を低減できます。例えばPFC回路では、ディスクリートのGaNとSiC金属皮膜シリコンFET(MOSFET)の構成と比較して、理想ダイオード・モードによって第3象限の損失を最大66パーセント低減できます。さらに、理想ダイオード・モードは適応デッドタイム制御が不要で、ファームウェアの簡素化と開発期間の短縮に役立ちます。詳細に関しては、アプリケーション・ノート 「最大限のGaNデバイス性能を提供する理想ダイオード・モード」(英語)をご覧ください。

 

最大限の放熱特性を提供

TIの GaN FETパッケージは、最も近い競合製品と比較して23パーセント低い熱インピーダンスを提供することから、より小型の放熱器を使用できるほか、放熱設計の簡素化に役立ちます。これらの新型デバイスではパッケージの上面または下面からの放熱を選択でき、あらゆるアプリケーションの放熱設計に最大限の柔軟性を提供します。さらに、これらのFET製品はデジタル温度センス機能を提供、能動的な電力管理が可能で、負荷の変動や動作条件の変化に対応してシステムの放熱特性を最適化できます。

 

パッケージ、供給と価格について

現在、TI.comから、産業用グレードの4種類の600V GaN FET製品の量産前バージョンを12mm角のQFNパッケージで供給中です。1,000個受注時の単価(参考価格)は表をご覧ください。量産出荷は2021年第1四半期の予定です。評価モジュールはTI.com から供給中で、価格は199ドルから設定されています。

型番

1,000個受注時の単価

(参考価格)
評価モジュール 価格
LMG3422R050 8.34ドル LMG3422EVM-041 199ドル
LMG3425R050 8.92ドル LMG3425EVM-041 199ドル
LMG3422R030 13.72ドル LMG3422EVM-043 199ドル
LMG3425R030 14.68ドル LMG3425EVM-043 199ドル
 

車載向けの 『LMG3522R030-Q1』と『LMG3525R030-Q1』 650V GaN FET製品の量産前バージョンと評価モジュールは、TI.comより、2021年第1四半期に供給される予定です。技術評価用サンプルの供給に関しては、www.ti.com/autoganからお問い合わせください。

 

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