高速でフレキシブルな EV 充電ネットワークの構築

電気自動車の将来において、グリッド事業者は半導体技術を活用し、より柔軟にエネルギー・インフラを管理できるようになります

18 3月 2022

世界各地の政府が持続可能性の目標に取り組み、自動車の電動化を推進するために自動車業界が 2025 年までに合計 3,300 億ドル以上の投資を計画している中、EV への移行は必然的と思えます。

ところで、1 つの地域で数千台の EV が同時に充電器に接続し、電力グリッドに予測困難な需要が発生した場合、どうなるのでしょうか?

EV の充電は、迅速、手頃、安全、堅牢であることが求められます。また、電動化の流れを推進するために、充電に伴う追加の電力を発電、蓄積、送電、配電するためのフレキシブルなインフラの実現も必須です。充電の利便性、手ごろな価格、持続性をいっそう向上させる上で、半導体技術が重要です。

充電の高速化でより多くのEVの導入を実現 

変化が生じると、多くの場合、不確定性が発生します。消費者が製品を信頼できるようになるまで、その傾向は続きます。EV の購入を検討している消費者もこれに当てはまります。消費者は、走行距離、充電ステーションの有無、充電と路上に戻るまでの所要時間などの要素において、信頼できる根拠を必要としています。ファミリー・カーは、スーパーマーケットへの手軽な移動や、急に思い立った日帰り旅行にも対処する必要があるので、利便性と手頃な価格も重要です。これらの実現のために、最先端の各種技術が非常に重要な役割を演じます。充電の効率を高める上で、TI のC2000™ リアルタイム・マイコンのような組み込みプロセッシング技術は、TI の絶縁型ゲート・ドライバや GaN パワー・デバイスとシームレスに組み合わせて動作させることができます。

サイズは、効率を拡張するときに重要です。DC Wallbox、つまり家庭設置用の EV チャージャのようなポータブル DC チャージャのサイズを小型化すると、大きな利益と優れたコスト効率が得られる可能性があります。GaN 技術は、マルチレベルの電源トポロジをより高いスイッチング周波数で動作させることができます。電源システムを設計する際に磁気素子を小型化し、銅や他の原材料の使用量を減らすことで部品コストを削減することができます。フル統合型のGaN (窒化ガリウム) パワー・デバイスを採用することで、シリコン・ベースの従来の原材料を使用する場合より迅速かつ効率的に充電を実行できます。また、マルチレベル・トポロジの効率をいっそう向上させることができ、放熱や冷却に使用する電力も削減できるので、総所有コストの削減に貢献します。

また、高速充電ステーションの充電能力も大幅に向上しています。以前の標準は150kW でしたが、現在は 350kW およびそれ以上の充電能力が視野に入っており、進歩は続いています。その結果、EV の充電はいっそう高速になり、多数の EV を導入する時にチャージャがボトルネックになりにくくなります。

充電に関連する課題に対処する技術

マクロレベルでは、ピーク時にインフラストラクチャを柔軟に使用できるようにするために、最適な電力配分と負荷分散が不可欠です。 スマート技術と双方向充電は、消費者の使用状況を把握し、リアルタイムに対応する方法で、課題に対処するのに役立ちます。

自動車通勤をしている人の大半は、仕事が終わった後に家で充電を行うので、同じような時間に充電が一斉に行われるということに対処する必要があります。半導体技術は、スマート・エネルギー計測を通じて、エネルギー分配に関係するフレキシビリティを向上させることで、充電に関連する課題に対処できます。

電流センシングおよび電圧センシング技術の堅牢性を向上することにより、グリッドとの接続性を高め、エネルギー消費を最適化できます。 天候パターンに敏感に反応するスマート・サーモスタットと同様に、Wi-Fi®や、Wi-SUN®などの Sub-1GHz 規格を使用するスマート・エネルギー計測機能は、エネルギー価格のリアルタイム調整を追跡し、より良い電力管理の決定を行うことができます。米国と欧州では、太陽光発電の家庭はエネルギーと充電 EV の分野で大きな一部になることが予測されています。

双方向充電では、余分な電力を消費者がグリッドに送り返すことができます。 TI のエネルギー計測技術は、EV、消費者の宅内バッテリ、グリッドの間で電力分配フローを測定することができます。スマート・エネルギー計測機能を装備している双方向充電ステーションは、職場に変革をもたらす可能性があります。EV (電気自動車)がアイドル状態でドライバーが職場で働いている間、グリッドのオペレータは、需要に応じて太陽光発電と風力発電に対応できるようになります。

慣れ親しんだ取引が電気にも

時間は貴重なので、充電プロセスを短縮することが重要です。つまり、路上での充電時間を短縮し、利便性を最大限に高めることが重要です。ドライバーは長年にわたって、ガソリン・スタンドへ行く習慣があります。そこで給油をし、迅速かつシンプルな取引方法で支払いを行います。テクノロジーを採用すると、 EV ドライバに関して同様の支払いとコネクティビティの利便性を実現できます。TI の Linux ソフトウェアを搭載した Sitara プロセッサは、 Open Charge Point Protocol(OCPP)とISO 15118標準のVehicle to Grid通信インターフェイスをサポートしており、EV 、充電ステーション、ユーティリティ間でのシームレスなトランザクションと情報交換を可能にします。 

最終的に、消費者は充電ステーションの利便性と利用可能性を重視します。 これにより、走行距離の不安を軽減し、 EV の需要をさらに高めることができます。アクセス性、利便性、価格のいずれを向上させる場合でも、 TI の半導体技術は充電インフラの重要な部分として活用され、電動化への移行に寄与します。