半導体が将来の自動車技術を加速させる7つの分野

世界中で自動車の電動化が推進されている今、半導体が、電気自動車 (EV) の性能の最適化、開発の迅速化、価格の低下に貢献しています

06 1月 2022

自動車業界では、電気自動車(EV)の未来に向けて、変化が加速しています。自動車メーカーは、現時点で市販されている各モデルに比べて、2030 年の自動車は大きく違うと主張しています。

自動車メーカーが、燃焼型エンジンを搭載したモデルを最後に出荷するのも時間の問題です。自動車は永続的に変化します。どのように変わるのでしょうか?

多くの皆さんと同じように、私もEVの購入を検討しています。自動車に関しては、数えきれないほどのレビューやレポートがあります。最高の自動車を見つけるために情報を集めます。車に欲しいもののリストは長いです。次回購入する自動車は、技術的な革新性があって、信頼性が高く、手頃で、安全かつ快適でなければいけません。私が期待しているいくつかの機能は、次のとおりです。

  • 充電が高速で、1 回の充電あたりの走行距離が長い
  • ハイパフォーマンスで安全な走り
  • リアルタイムの診断機能は、私のニーズと好みに基づいて設定可能で、見えるところに表示
  • 持っているすべてのデバイスにあるコンテンツにアクセスできる、シームレスなコネクティビティ
  • 最高のサウンドとユーザー環境を作り出すプレミアム性能のオーディオと音声
  • 革新的で変更しやすい、指先で操作できるコマンドセンターを通じて、座席の機能、照明、空調を含めた車内環境をカスタマイズ
  • 死角モニタやフロントレーダーなどドライバーと乗員を守る先進的な安全機能

この欲しいものリストを現実にするために、自動車業界の革新を加速させる必要があります。半導体供給企業と、システムエンジニアや自動車メーカー間の協力はスピードアップしていきます。皆様の理想的な車を自動車メーカーが実現できるように、半導体業界、特にTI が貢献できる 7 つの分野を紹介します。

  1. 高電圧バッテリ

    EVの最も大切な部品はバッテリで、1 回の充電あたりの走行距離が長くなるよう、バッテリの高精度監視機能が必要です。バッテリ・モニタやバランサなど TI の革新的な製品は、高精度のセル測定を実現、安全性機能を一層向上、複数の追加機能を統合、精度の向上とコストの削減に貢献します。
     
  2. ワイヤレス・バッテリ管理システム

    高電圧のバッテリ管理システムをワイヤレスで設計したときに、どれほどのフレキシビリティを確保できるか想像してみてください。かさばる配線が不要になると同時に、配線重量の軽減を通じて、走行距離の延長、性能の向上、全体的な保守の改善につながります。TI 独自のワイヤレスプロトコルと、リアルタイム接続機能を搭載した一連の IC 製品を採用すると、これらの特長を実現しやすくなります。
     
  3. 高速で効率的な充電

    EV がいっそうの高電圧化を進め、より効率的なオンボード・チャージャを装備しようとする場合、リアルタイム・デジタル制御ソリューションを採用した、洗練された電源トポロジーが必要になります。TI のリアルタイム・マイコン製品は、TI の絶縁型ゲート・ドライバやフル統合型 GaN パワーデバイスとの組み合わせでシームレスに動作し、高速かつ効率的な EV 充電を可能にします。
     
  4. 路上での最適な性能

    最適な性能を実現するには、トラクション・インバータ・システムが不可欠です。このシステムは、高い演算性能と制御機能の組み合わせを必要とします。TI の各種組込みプロセッシングチップなどがこれに該当します。このシステムは、TI の絶縁型ゲートドライバ製品に属する製品群など、出力電流の動的制御機能と協調して動作します。その結果、理想的なモータートルクを維持すると同時に、システム全体の効率を改善することができます。
     
  5. コネクティビティ、ディスプレイ、カメラ、サウンドの各オプション

    TI の DLP®技術、車載認証済みプロセッサ、およびワイヤレスコネクティビティデバイスを採用すると、ディスプレイ、コネクティビティ、カスタマイズ選択肢の強化と最適化を車全体で実現できます。TI のFPD-Linkシリアライザとデシリアライザは、複数の車載システム間で無圧縮ビデオデータを送信し、より解像度の高いカメラから取得したデータを先進運転支援システムやディスプレイで活用するのに役立ちます。加えて、TI の車載イーサネット製品はより高速なネットワークを可能にし、TI の車載スピーカ・アンプ製品はマルチチャネルの Class D プレミアムオーディオ性能を実現します。
     
  6. 先進運転支援システム (ADAS)

    自動車メーカーは衝突事故のない将来を目指して、より安全な運転環境の開発と同時に、車の自動化を強化するための基礎構築を進めています。TI の製品や技術を活用する自動車は、ドライバーに似た動作を実現できるように、すでに動き始めています。たとえば、車外と車内の状況の検出、車のコンポーネント間でのデータ交換、決定を下すための各種処理などです。TI の車載認証済み IC 製品には、高精度レーダー SoC、強力なプロセッサ、信頼性の高いパワー・マネージメント製品などがあり、高性能ADASの実現に役立ちます。
     
  7. 自動車の安全性強化

    機能の安全に関する各種規格は、既存の車載システムの設計に関する業界の考え方に変化をもたらし、先進的な安全性機能、信頼性、性能の向上を通じて運転環境の改善に寄与しています。ワイヤレスバッテリ管理システムから統合型パワートレインまで、あらゆる車載システムにとって機能の安全性は不可欠なコンポーネントになりつつあります。各種車載認証済み IC で構成された TI の幅広い製品を、それらに関する機能安全の資料と組み合わせると、開発中のシステムで、意図するASIL (Automotive Safety Integrity Levels、車載安全性インテグリティレベル) と、より安全な運転環境を実現しやすくなります。
     

自動車業界が引き続き進化を加速していくのは明らかです。現時点で最新技術とみなされているものが、ごく近い将来に時代遅れとして扱われるようになります。半導体は、自動車の障壁除去、コスト削減、複雑さの低減、安全性要件への適合を進め、将来を見据えた自動車が製造されることに貢献しています。自動車の変革を前進させるために、TI は自動車業界と協調しています。TI はここまでに説明した最善かつ最も安全な運転環境の実現必須項目に役立つ製品を提供しています。

この記事は、TI Live! Tech Exchangeで発表された基調講演を基に、抜粋と整理を行ったものです。