リアルタイム処理の簡素化で、テクノロジーをより身近に

エレクトロニクスシステムのエッジ側でのリアルタイム制御、インテリジェンス、および通信機能ニーズの高まりに合わせて、高性能マイコンはシンプルでコスト効率のよいソリューションを実現できるようになっています。

04 8月 2021

スマートファクトリからスマートシティまで、私たちを取り巻く世界では自動化の流れが進んでおり、より速いスピード、インテリジェンス、高い精度をエレクトロニクス製品から引き出す必要があります。自動型ロボット(英語)は、人間と協働します。たとえば、さまざまな物体の周囲で安全に移動できるように、高精度のモーター制御機能と、ナノ秒 (ns) 単位の意思決定をするための高速な処理能力が必要になります。また、他のロボットと互いに協力して動作できる通信機能も必要です。

高度なエッジ側分析機能と、優れたリアルタイム応答性能をエレクトロニクスシステムに追加する作業が、いっそう手頃なものになろうとしています。TI の Sitara™ マイコン部門責任者Mike Pienovi に、スマートなコネクテッド (ネットワーク接続型) システムのニーズを満たす上で、マイコンの進化に影響を及ぼすものとは何か、考えを聞いてみました。

質問:マイコンの新たな需要を生み出すのはどのようなトレンドでしょうか?

製造業、データセンター、スマートシティ、次世代自動車など、エンジニアや業界関係者と話をしていて耳にするのは、エッジ側でのインテリジェントを求める需要の高まりと、システム相互間で転送されるデータ量の増加です。エッジ側インテリジェンスは、集中的な場所に依存する代わりに、リアルタイムの意思決定を下す必要のあるデバイスにいっそう近接した場所で計算を実施することになります。その結果、たとえば工場内のロボットは、複雑な業務を実行する場合や、機械相互間 (M2M) のデータ転送をより低コストで実施する場合に必要な、リアルタイム処理を迅速に実行すること、または保護状態にするためにセキュアデータを処理することが可能になります。どの会社であっても、最終的な目標は、自社の倉庫や工場の生産性を上げ、より効率的にすることです。ロボットのタスク実行をより早く、そして高精度化できる場合、スループットは向上します。

もう 1 つの重要なトレンドは、機能安全への需要です。多くの場合、人間と機械が協働しています。そのため、どの動作も誤った動きにならないよう、開発者はさまざまなメカニズムを用意します。これらのシステムを制御するデバイスに、より多くのインテリジェンスを実装する必要があります。私は、性能や精度より、安全性に関連するこの追加レイヤーが高い水準に位置する必要があると考えています。システムは、安全性確保を前提として動作することが期待されているからです。

システムがネットワーク接続されることが増えてくる中で、高度な処理性能、デバイス間通信での帯域幅の拡大、的確なリアルタイム制御機能、そして安全性とセキュリティが強化されたマイコンへの需要が高まっています。

質問:マイコンはどのように進化していますか? その傾向は何ですか?

一般的に、センサ、スイッチ、モーターなど各種コンポーネントを制御する目的で、従来型のフラッシュベースのマイコンが使用されています。自動化の高まりに対応するために、TI はお客様がマイコンに何を求めているかを確認しています。お客様の希望は、性能の向上、大量のデータの迅速な計算、さまざまなネットワーク接続型システムへのデータと計算結果の通知などであり、従来の考え方に従うと、これらはプロセッサの役割より広い範囲に該当します。

私たちの目標は、実装が容易であると同時に、セキュリティやネットワーク機能も含めてシステムに対する追加のニーズを満たすアーキテクチャを構築すること、そして、その土台の上に適切な性能を発揮できる組込みプロセッシング・ソリューションを開発することです。そうすれば、エンジニアは設計上の課題を解決する際に、複数のオプションを活用することができます。TI の新しい Sitara AM2x マイコンの設計理念は、マイコンとプロセッサのギャップを埋め、処理能力の要件を 2 倍または 3 倍に高めている各種エレクトロニクスシステムに追加の能力を提供することです。

質問:高性能マイコンは、ロボット以外に、どのようなシステムに活用できますか?

どの業界でも高性能マイコンをさまざまな方法で活用することができますが、特に自動車業界とグリッド (商用電力) インフラ業界です。両業界とも、システム内でより高速な計算能力を求めています。ソフトウェア定義自動車(Software-defined car)の場合、高性能マイコンで低レイテンシのリアルタイム制御ループを活用し、パワートレイン制御の高度化、または車内ネットワーク通信のスループットの向上に役立つ処理能力向上を実現することができます。グリッドアプリケーションでも同じテクノロジーを使用して、グリッドから自動車に充電用エネルギーを転送する際に、効率がよく、そしてインテリジェントな方法をサポートすることができます。

スマートビルディングでセンサテクノロジーが増加するにつれて、処理性能の向上が求められます。エッジ側システムに分析機能を搭載できる場合、システムは環境に応じて、複雑な判断を迅速に下し、室内の温度設定や照明のカスタマイズなど、多くの機能を実現できるようになります。

質問:このテクノロジーを現実的にするために必要なことは何ですか?

プロセッサ・レベルのテクノロジーを採用している市場を例にあげると、自動車のアダプティブ・サスペンション (道路の状況やドライバーの好みに応じて、乗り心地が変化) が該当しますが、このような事項をシンプルな方法で実現できるようになります。エンジニアが TI のデバイスを使用してコスト効率よく分析できるよう、開発を進めています。その結果、将来はこの分析能力が市場でいっそう普及する見込みです。

エンジニアリングの観点で考えると、より高い性能レベルをマイコンで実現した場合、組込み開発に経験が浅い人でも取り組みやすくなります。TI はハードウェアとソフトウェアのリソースを提供する方法で、お客様がこの性能を簡単に活用できるようしています。その結果、設計プロセスの進行もいっそう容易になります。私たちの目標は、エンジニアがシステムでこのテクノロジーを簡単に活用できるようになることです。そうすれば、自動化への需要がますます高まる中で、対応することができるようになります。