変わりゆく世界の中で加速するワイヤレス・コネクティビティ技術の進歩

ワイヤレス接続によりリモート・ワークからホーム・スクールまで、素早い適応と生産性の維持が可能に

30 3月 2021

今みなさんは、自宅の作業場所からオンライン・ビデオ会議を済ませ、子供がリモート授業にログインするのを見届けた後に、この記事を読んでいるところかもしれません。リモートで働く世界中の何百万もの人たちは、お互いにつながって生産的で創造的な日々を送るためには、さまざまなところまで届くようになったワイヤレス接続が不可欠なものになってきています。

他の多くの企業と同じようにTIでも、今年はパンデミックの影響を受けて自宅から仕事をせざるをえなくなりました。半導体ビジネスは、大規模な研究開発プロジェクトを進め、大勢の顧客をサポートし、何百万個もの部品を出荷する、複雑な事業です。なんとか事業を止めずにいられたのは、支えとなるテクノロジと社内の数々のチームの粘り強さのおかげと言えるでしょう。

1つの例をご紹介します。TIのあるカスタマーが規制に関する認証取得を進めていたところ、新しいファームウェアを入手する必要が生じました。アジアのサードパーティーのラボで機器を稼働させており、開発はヨーロッパで行い、TIが米国からサポートしました。1週間以内に、そのラボにアップグレードが提供され、認証を通すことができました。3つの大陸をまたぐ3つのラボが協力してこの問題を解決できたのですが、関係者は誰も自宅を離れることがなかったのです。

変化のペースが加

 

このようにワイヤレスに、そしてシームレスに、高速な通信でつながることは、我々の社会を維持する上で欠かせない要素です。子供たちの教育や、家族が連絡を取り合うのもリモートで行われます。医療従事者は患者をリモートでモニタリングします。自動車はソフトウェアを自動的にダウンロードできます。企業が新製品やサービスを開発し、自分たちのシステムを監視したりアップグレードしたりするのも、離れた場所から行われます。他にもたくさんの例が考えられます。

このような進歩は、瞬く間に私たちの生活に溶け込み、変化のペースがますます加速するのは間違いありません。

私はお客様と定期的に話し合い、技術の発展とTIの企業文化を絶えず注視しながら、5年以内には当たり前のものになるようなイノベーションに取り組むTIのチームを運営しています。これからについての私の考えをお話しします。

1.    新しいサービスの成長を下支えするリモート・アクセスとリモート・コントロール

リモート・ワークやリモート・アクセスがより快適なものになるにつれて、新しいサービスが受け入れられるスピードも上がるでしょう。例えばデジタル・キーは、家庭、オフィス、自動車を対象とした新しいサービスのマーケットを生み出します。デジタル・キーは、車や住宅とオーナーとのやり取りをパーソナライズしたり、キーオフ時に低電力で接続動作ができるパスを構築したり、Phone-as-a-Key(スマートフォンをキーとして使用する)アプリケーションでユーザーの車へのパッシブ・エントリを実現したりと、ユーザー体験をさまざまに拡大する可能性を秘めています。

車を例にすると、ユーザーはただ車の方に歩いていくだけで、スマートフォンのデジタル・キーが車のロックを解除し、デジタル・プロファイルを使ってミラーや、シート、ハンドル、ヘッドアップ・ディスプレイを、ユーザーの好みに合わせて車が自動的にセッティングします。

また、Bluetooth® Low Energyを利用したカー・アクセス・システムでは、セキュリティ確保されたさまざまな測距/測位技術を車が使用して、承認済みのスマートフォンが車内にあるかどうかを特定できるようになるので、ドアのロックを解除してエンジンをかける前段階の安全対策がさらに1つ加わります。

さらに、ユーザーが友人や家族用のデジタル・キーを作ったり、駐車サービス用に臨時のデジタル・キーを作ったりできるので、カー・シェアリングがいっそう便利になります。臨時デジタル・キーを渡して、点検のために車を預けたり返してもらったりといったことも、すぐに普通になると考えられます。

2.    新しい形態の通信インフラストラクチ

コネクティビティの進化の根幹は、常時インターネット接続です。従来は、インターネット接続サービス・プロバイダやセルラー・ネットワーク事業者により提供されてきたものですが、将来は、IoT(モノのインターネット)の「モノ」を開発する側が、インターネットに接続するための別の方法を持つようになると考えます。

例えば、Amazon Sidewalk(英語)は、低帯域幅デバイスの通信範囲を拡張でき、定期利用契約が不要なインターネット接続を確保します。Amazon Sidewalkは不特定の通信接続を利用し、エンドデバイスのメーカーは、もともとインターネットにつながっているAmazon Sidewalkブリッジの展開済みの基盤を活用できます。

家の中や外にも接続ノードが増え続ける中、信頼性のある長距離ネットワークの構築は重要です。この長距離ネットワークにより、センサのデータを多く収集し、より多くのデバイスをモニタリングできるようになり、優れたスマート製品が作れるようになります。

私たちの周りの製品には、さまざまな規格の無線が使われるようになっており、デバイスが相互に通信したりクラウドと接続したりするには、いくつものゲートウェイが必要です。そこに登場したAmazon Sidewalkは通信にかかわる複雑さを軽減するので、製品メーカーが独自にゲートウェイを設計・製造する必要がなくなります。それにより、私たちはこれまで以上にたくさんのデバイスをつなげることができます。

3.    次々と登場するワイヤレス接続テクノロジ

ワイヤレス・テクノロジは、急速な発展を続けるコネクテッド社会を支えるバックボーンです。このようなテクノロジにより、通信速度、通信範囲、通信統合にまつわるさまざまな限界が押し広げられます。一方で開発者やメーカーは、IoTの設計がよりシンプルになる、規格化されたソリューションを求めています。

Bluetooth®とWi-Fi®のワイヤレス・テクノロジは一般の利用者にもよく知られていますが、これだけですべての接続通信のニーズには対応できません。例えば、Sub-1GHz帯の無線信号は、その物理的特性により、長距離で低電力のアプリケーションに適しています。

長距離で低電力の通信デバイスを利用したネットワークは、一般にLPWAN(Low-Power Wide-Area Network)と呼ばれます。LPWANが有効なアプリケーションの例には、温度や大気汚染の程度を測定する環境センサや、バッテリで動く水量、暖房、ガスの流量メーター・センサなどがあります。その開発には多くの詳細な無線設計能力が必要とされることが一般的ですが、この分野はあまり規格化が進んでいないため、普及が抑えられています。Sub-1GHzテクノロジの利点が明らかになるにつれ、この新しい規格の利用が広がり、よく知られるようになると考えられます。

Sub-1GHzテクノロジを活用できる例の1つがAmazon Sidewalkです。さらに今年は、大規模ネットワーク向けMIOTY LPWANソリューションの運営団体となるMIOTY Alliance(英語)が結成されました。IoTの舞台が成長し進化し続ける中、MIOTYといった多くの新しい規格により、利用できるコネクティビティが世界中に広がることで、マーケットの競争がより激しくなり、ユーザーにとってはよりよい製品が生まれるでしょう。

すべてとのつながりを保

 

最近のパンデミックは、世界中の人々と経済に多大な被害をもたらしていますが、それと同時に、私たちの生活、教育、仕事にとってコネクティビティがいかに重要であるかもはっきりと示しました。このようなコネクティビティのテクノロジのおかげで、私たちは常に状況を見ながら、変化し続ける世界に俊敏に順応できています。

マーケットが不透明な時期であっても、お客様がつながりと生産性を保てるよう支援する ― それは、半導体を通して電子機器をよりリーズナブルにすることでより良い世界を創造しようと情熱を注ぐTIのあり方の1つです。TIはこれからも、さらに小さく、効率と信頼性が高く、より求めやすいテクノロジの開発を続け、スケーラブルな方法で何十億ものデバイスを互いにつなぐ可能性を切り開いていきます。

さらに、テクノロジによってすべてとのつながりを保つためにも、TIはワイヤレス接続テクノロジの分野でリーダーシップを発揮し続けることで、お客様の技術革新と、確実な事業運営を可能にし、世界中のビジネスと経済を強化できると考えています。

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年11月17日)より翻訳転載されました。 
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