高精度設計の簡素化につながる、業界初のフェライト・ビーズ補償内蔵、低ノイズ降圧コンバータを発表
低ノイズ、低リップル降圧コンバータにより、ノイズの影響を受けやすいアプリケーションの高効率動作を実現

日本テキサス・インスツルメンツは、フェライト・ビーズ補償を内蔵した低ノイズDC/DCスイッチング・レギュレータの新しいファミリを発表しました。低ノイズ、低リップル降圧コンバータ『TPS62912』と『TPS62913』は、100Hz~100kHzの周波数に対するノイズが20µVRMSと低く、出力電圧リップルが10µVRMSと非常に低いため、1個ないしは複数の低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)を設計から省くことができるとともに、最大76%の電力損失の削減、基板面積の36%の節約を可能にします。製品の詳細に関しては、www.tij.co.jp/tps62912-pr-jpwww.tij.co.jp/tps62913-pr-jpをご覧ください。 

 

電源のノイズは、検査測定、医療、航空宇宙、防衛の分野や無線インフラストラクチャなどの多くの高精度アプリケーションを設計する際の大きな課題です。通常の低ノイズ電源アーキテクチャは、DC/DCコンバータに加え、『TPS7A52』、『TPS7A53』または『TPS7A54』といった低ノイズLDO、フェライト・ビーズなどのオフチップ・フィルタで構成されています。フェライト・ビーズ補償を内蔵する『TPS62912』と『TPS62913』は、ほとんどのシステムに既に含まれるフェライト・ビーズを実質的な高周波数ノイズのフィルタとして使用することで、電源出力電圧リップルを約30dB削減し、電源設計を簡素化します。低ノイズ降圧コンバータの働きについては、技術記事「低ノイズ降圧コンバータによりノイズとリップルを最小限に抑える」をご覧ください。

 

TIは、2020年11月9日から12日に開催されるelectronica virtual 2020のバーチャル・ブースにおいて、『TPS62913』のデモンストレーションを予定しています。詳細については、こちらをご覧ください。

 

電源ノイズを簡単に抑えられる

 

信号の精度と品質を保つために、高精度システムの電源レールは、低ノイズで低リップルであることが求められます。『TPS62912』と『TPS62913』はこの2つの特性を持つだけでなく、最大100kHzまでの電源除去比が65dBです。さらに、この降圧コンバータ・ファミリは出力電圧誤差が1%未満のため、厳しい出力電圧精度を確実に維持できます。『TPS62912』と『TPS62913』は、無線周波数スプリアスをさらに減衰させるスペクトラム拡散周波数変調を使用でき、外部クロックとの同期が可能なため、医療用画像処理やレーダーといったアプリケーションに非常に重要な信号対雑音比(SNR)とスプリアスフリー・ダイナミック・レンジ(SFDR)の目標達成が容易になります。

 

効率を最大限に高め電力損失を抑える

 

従来よりエンジニアは、ノイズの影響を受けやすいアナログ回路の電源におけるノイズと効率のトレードオフの問題に直面してきました。スイッチング・レギュレータを単独で使用するとスイッチング・ノイズが大きくなり過ぎますが、ノイズ低減のためにポスト・レギュレータLDOを追加すると、特に負荷電流が高いときに電力損失の増加につながります。『TPS62912』と『TPS62913』はピーク効率が97%のため、ノイズ・フィルタリングにLDOを使用しない設計が可能になります。これにより電力損失が最大76%削減され、アナログ・フロントエンド(AFE)設計で1.8W、『ADC12DJ5200RF』といった広帯域A/Dコンバータ(ADC)を使用する設計では1.5Wとなります。これは、従来の低ノイズ電力アーキテクチャと比較したときに、それぞれ20%と15%の効率向上に相当します。詳しくは、アプリケーション・ノート「低リップル、低ノイズ降圧コンバータTPS62913を使用してノイズの影響を受けやすいADCの電源を作成する」(英語)をご覧ください。

 

基板面積を節約しシステム全体のコストを削減する

 

設計に『TPS62912』または『TPS62913』を使用することで、リニア・レギュレータだけでなくそれに付随するパッシブ部品も省けるので、プリント基板(PCB)面積をLDO 1個あたり約20mm2節約できます。通常1個のLDOを使用する設計では、36%のPCB面積の節約になります。その他にも、降圧コンバータにはフェライト・ビーズ補償が内蔵されているため、DC/DC部品点数の削減につながります。コンデンサ2個と抵抗2個が設計に不要になるので、システム全体のコストがさらに削減される上に、設計期間の短縮にもなります。

 

供給と価格について

 

TPS62912』(2A)と『TPS62913』(3A)の量産前製造分は、2mm×2mm、10ピンQFNパッケージで現在TIウェブサイトでのみ供給中です。1,000個受注時の単価(参考価格)は、それぞれ1.06ドルと1.16ドルから設定されています。評価モジュールTPS62912EVMTPS62913EVMは、49ドルでTI.ウェブサイトより供給中です。両製品とも、量産品は2021年第1四半期に供給開始の見込みです。

※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。